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下の歯だけの矯正は安い?範囲を決めているのは、動かさないほうの歯

気になっているのは下の前歯だけ。上は並んでいるし、笑ったときに見えるのも上の歯です。だとすれば、下だけ動かせば費用は抑えられるはずだと考えます。

相談に行くと、上下をまとめた計画を提示されることがあります。上は問題ないと言ったのに、なぜ範囲が広がるのか。

ここで効いているのは、動かさないと決めたほうの歯です。範囲を決めているのは、希望の側ではなく上下の関係の側にあります。

目次

下の歯だけを動かす計画は成立する

下の歯だけを対象にした矯正そのものは行われています。下の前歯に軽い重なりがある、わずかなすきまが空いている。そうした範囲であれば、下だけを動かす計画が組まれます。動かす歯が少なければ装置も工程も減るので、費用も抑えられます。

問題は、その範囲を誰が決めるかです。成立する条件があり、それを決めているのは予算ではなく口の中の状態です。

条件の中身は、変わる量にあります。下だけの計画が成立するというのは、上との接し方がそのまま保たれるという意味ではありません。変わる分が、噛み合わせとして許せる範囲に収まると見積もられた、という意味になります。

安いプランを選んだせいで噛み合わせが崩れるのを避けたい、という心配に対しては、この見積もりが立っていることがそのまま答えにあたります。範囲を狭めても変化は起きていて、その大きさが受け入れられる範囲に収まっている、という判断がそこにあります。

「下だけ」と「前歯だけ」は、狭める方向が違う

「下の歯だけ」と「前歯だけ」は、どちらも範囲を狭める言い方ですが、狭める向きが別々です。前歯だけを動かすというのは、前後に浅くする形にあたります。これに対して「下の歯だけ」は、上下のうち片方のあごを丸ごと対象から外す形です。前者は奥行きを削り、後者は片側を落とします。範囲の言葉の内訳は上下の前歯をまとめて動かす範囲の話で揃えてあります。

噛み合わせは、上下の歯が作っている関係

歯並びは、片方のあごだけで完結していません。上の歯と下の歯が接して、はじめて噛み合わせという状態になります。上の歯列と下の歯列は、それぞれ別々に整っているというより、互いの位置で釣り合っています。

ここから、ひとつのことが導かれます。片方を動かせば、相手との関係はその分だけ変わります。 相手の歯が一本も動いていなくても、関係のほうは変わります。動かした側の位置が変われば、接し方も変わるためです。

下の前歯の重なりを解く場面で考えると、はっきりします。重なっている歯を並べるには、並べるための場所が要ります。場所の作り方によっては、下の前歯は前へ出る形で収まります。 前に出れば、上の前歯との前後の関係はその分だけ変わります。

場所の作り方は一通りではありません。歯と歯が触れ合うところをごく薄く削り、前へ出さずに収める設計もあります。何をどれだけ使うかによって、前後の関係の動き方も変わります。場所をどこから捻出するかの選び分け——これを正面から扱った記事が別にあります。

いずれの方法をとるにしても、上を動かさないと決めているなら、条件がひとつ加わります。下の動きは、噛み合う形に収まるところまでで止まります。 上が動かない以上、噛み合わせのつじつまは下の側だけで合わせることになるからです。

矯正で動かせる量に制約がつく理由は、ひとつではありません。骨の側からは、動かすこと自体に制約がかかります。ここで効いているのはそれとは別で、動かした先が噛み合わせとして成立するかという制約です。動かせないというより、動かした先の着地点が選べなくなる、という種類のものにあたります。

上の位置が、下の到達点を先に決めている

上下をまとめた計画がとられる理由も、ここから見えます。

上を動かさないと決めた時点で、上の歯の位置は固定された目印になります。下の歯がどこまで行けるかは、その目印に合う範囲のなかで決まります。下の到達点を絞っているのは、下の側の都合ではなく上の位置です。

上も動かせる前提にすると、この目印自体を動かせます。目印が動けば、下の到達点を置ける場所も変わります。上下をまとめた計画が組まれるのは、動かす歯を増やしたいからというより、到達点を置ける場所を広げるためという側面があります。

範囲が先に決まり、金額はあとからついてくる

費用から考えはじめると、順序が反対になります。金額を下げたいから範囲を狭める、という道筋です。

実際に起きているのは逆の順序です。上との関係が保てるかどうかで動かせる範囲が決まり、その範囲に対応する金額が出てきます。 範囲が先にあり、金額はその後ろにつきます。

そのため「下だけでお願いします」という伝え方は、希望としては伝わりますが、範囲の決定そのものにはなりません。決まるのは検査を経たあとです。上の歯の位置、下と噛み合ったときの関係、動かしたい量。これらが揃ってはじめて、下だけで収まるかどうかが出ます。

上下をまとめた計画が示された場合、そこに上を動かさないままでは関係が収まらないという判断が含まれていることがあります。理由はほかにもあります。上の歯列そのものに動かす対象がある場合もありますし、医院のプランが上下をひとまとまりで組まれている場合もあります。

ただ、仕組みが分かることと納得できることは別だとも思います。金額は具体的で、噛み合わせの関係は目に見えません。金額が具体的で関係が見えないという非対称そのものが、順序が逆に見える原因になっています。

なお本記事は、下だけを対象にした矯正一般の考え方として書いています。当院が扱うのは上下をまとめて対象とする範囲で、下あごのみを対象とするものはありません。

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上が動かない前提が崩れる場合

下だけの計画は、上が動かなくてよいことを前提にしています。この前提が成り立つかどうかが、成立と不成立を分けます。

ここで見られているのは、上の歯が並んで見えるかどうかではありません。上の歯列が単独で整っていても、下と噛み合ったときの関係は別に評価されます。見た目が整っていることと、噛み合わせとして安定していることは、別の観察です。

上下の前後の関係にずれがある、噛んだときの重なりが深い、奥歯の位置関係が合っていない。こうした状態があると、下を動かした結果が、いまの上の位置とは噛み合う形に収まらなくなります。前提が崩れれば、下だけの計画はそこで止まります。

上下の関係だけは、片方ずつ見ても出てきません。 上の歯列を眺め、下の歯列を眺めても、その二つが噛み合ったときにどうなるかは別に確かめる必要があります。噛んだ状態を横から見る検査や、歯型を取って合わせる工程が使われるのはそのためです。

※本記事で触れる歯列矯正は自由診療(マウスピース型矯正装置による歯列矯正)であり、公的医療保険の対象外です。参考として当院の費用と治療期間の目安は Lite 150,000円(税込)・約2ヶ月(上下前歯12本・マウスピース各7枚以内が対象)/ Basic 330,000円(税込)・約3ヶ月(上下前歯12本が対象)/ Pro 660,000円(税込)・約6ヶ月(上下24本が対象)/ 全歯を対象とするプラン 880,000円(税込)です。全歯を対象とするプランの治療期間は、動かす範囲が広いため個々の状態により異なります。当院のプランはいずれも上下をまとめて対象とするもので、下あごのみを対象とするプランはご用意していません。 期間はいずれも歯を動かす矯正期間の目安であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。通院回数は最低1回で、治療内容・個人の状態により異なります。安心保証制度とワイヤー補償が付帯するのは Basic・Pro のみです。歯の移動に伴い、歯の痛み・歯根吸収・歯ぐきの退縮・後戻りなどのリスクが生じる場合があります。歯の側面を削る処置を行った場合、削った部分は元に戻らず、一時的にしみることがあります。重度の歯周病や顎関節症などがある方は治療をお受けいただけない場合があります。

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下の歯だけの矯正に関するよくある質問

Q. 下だけの計画で始めて、途中で上も必要だと分かることはありますか?

動かしてみてはじめて確定する量があるため、進めながら見直しが入ることはあります。下の歯が動いた結果、上との接し方が想定と違ってきた場合に、範囲や進め方を組み直す判断になります。どの時点で見直しの判断が入るのか、そのとき費用と期間の扱いがどうなるのかは、計画のなかに置かれている部分です。

Q. 上の歯を動かさないと、あとで戻りやすくなりますか?

後戻りは、下だけの範囲でも、上下をまとめた範囲でも起こります。上を動かしたかどうかが、そこを分けるわけではありません。関わる要素は複数あり、動かし終えた位置で上下がどう噛み合っているかも、そのひとつです。どこで終わらせるかは計画の段階で設計される部分で、動かしたあとに位置を保つ装置は、範囲の広い狭いにかかわらず使われます。

Q. 下の歯を並べたら、上の歯が今より目立つようになりませんか?

下の歯を並べれば、その部分の見え方は変わります。上が目立つようになるかどうかは、上下の前後の関係と、笑ったときにどこまで見えるかによります。下の歯列が整うことで、上下の並びがまとまって見えることもあります。見え方がどう変わるかは、動かす前の状態によって違ってきます。

Q. 「下だけ」と伝えたのに全体をすすめられました。断ってもいいですか?

治療を受けるかどうかを決めるのは本人なので、断ることはできます。範囲は検査を経て決まるものなので、断ったからといって条件のほうが変わるわけでもありません。提案を受け入れるかどうかは、示された理由の中身を見てから決められます。

まとめ

下の歯だけを対象にした矯正は行われています。動かす範囲が狭ければ、装置も工程も減り、費用も抑えられます。

ただし、その範囲を決めているのは希望や予算ではありません。噛み合わせは上下の歯が接して成り立つ関係なので、片方を動かせば相手との関係はその分だけ変わります。上を動かさないと決めているなら、上の位置が目印になり、下の到達点はそこに合う場所で先に決まります。

安く収まったなら、それは範囲が限られていたということです。決めているのは、動かさないほうの歯のほうにあります。

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