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マウスピース矯正で噛み合わせはどうなる?並びとは別の軸で見る

前歯の軽いガタつきを、目立たないマウスピースで整えたい。そう考えて調べていくと、「マウスピースで噛み合わせが悪くなった」という声にぶつかることがあります。いま噛み合わせに困っていないのに、矯正でかえって崩れるなら、本末転倒に思えてきます。

この不安をほどくには、一つ分けておきたいことがあります。並びと噛み合わせは、別のことを指しているという点です。ここが重なったまま「マウスピースは大丈夫か」を考えると、答えが定まりません。

目次

並びと噛み合わせは、別のことを指している

歯並びという言葉で多くの人が思い浮かべるのは、正面から見た歯の位置です。前歯がまっすぐか、重なっていないか、すき間がないか。鏡や写真で見えるのは、この並びの部分です。

噛み合わせは、別の面を見ています。上下の歯を噛み合わせたときに、どう当たるか。奥歯がしっかり噛んでいるか、上下の前歯の前後の関係はどうか、噛んだときに力が均等にかかるか。これは、口を閉じて噛んだ状態でないと分からない部分です。

この二つは、重なるところもありますが、同じではありません。並びがきれいに見えても、噛んだときの当たり方が整っていないことがあります。逆に、多少の重なりがあっても噛み合わせは安定している、ということもあります。見えている並びと、噛んだときの当たり方は、別々に評価される軸だということです。

マウスピース矯正は、前歯をまっすぐにする装置、というイメージを持たれがちです。ただ実際には、上下の歯を覆って動かす装置なので、並びだけでなく噛み合わせにも関わります。並びを整えるついでに噛み合わせが勝手についてくる、という関係ではなく、噛み合わせは噛み合わせとして扱う対象になります。

「悪くなった」が起きるのは、並びだけを見て当たり方が置き去りのとき

マウスピースで噛み合わせが悪くなった、という話には、原因の見当があります。装置そのものというより、計画の側にあることがあります。

前歯の見た目をきれいにすることを優先して歯を並べると、上下の当たり方が後回しになることがあります。正面から見た並びは整っても、噛んだときに一部の歯へ負担が寄ったり、奥の当たりが変わったりする。見た目の完成と、噛み合わせの完成が、同じ地点にあるとは限らないためです。

ここで大事なのは、悪くなるかどうかの分かれ目が、装置がマウスピースかワイヤーかにあるのではないということです。分けているのは、上下の当たり方まで計画に入っているかどうかです。並びだけを目標にした計画なら、どちらの装置でも当たり方は置き去りになりえます。反対に、上下の当たり方まで設計に含めれば、マウスピースでも噛み合わせを含めた仕上がりを目指せます。

前歯を中心に動かすとき、奥の当たり方が可否をどう左右するかを掘り下げたのがマウスピース矯正は前歯だけできる?適応ケースと費用・期間を解説です。前歯だけを対象にしてよいかを、奥の噛み合わせの側から見分ける、という話になります。

治療中に噛み合わせが変わって感じるのは、装置が上下を覆うから

もう一つ、「悪くなった」と感じる場面があります。治療の途中で、噛み合わせが変だと感じるときです。

マウスピースは、上下の歯の噛む面を覆って使います。装着しているあいだは、上下の歯が装置の樹脂を挟んで当たるので、素の状態とは当たり方が変わります。治療中に噛み合わせが違って感じるのは、これによることが多いとされます。装置を入れているあいだの一時的な感覚と、外したあとにも残る変化とは、切り離して見ておく必要があります。

装置の厚みが上下の歯のあいだに入るため、奥歯の当たり方に影響することがある、という報告もあります。マウスピースを使ったあとに、奥歯がわずかに浮いたように当たる状態が見られることがある、というものです(Moradinejad ら、BMC Oral Health、2024年)。ただし、この報告自身が、それを確かめた研究はまだなく、そうした変化が起きること自体を否定する専門家もいる、と述べています。つまり、起こりうるとされる一方で、どれだけ・どの程度かの評価は、まだ定まっていません。

そのため、治療中に噛み合わせの変化を感じたとき、それがそのまま「悪くなった」を意味するわけではありません。装置を使っている間の当たり方の変化なのか、外したあとにも続くものなのかは、経過を見て確かめられる部分です。気になる変化に気づいたら、それが相談のきっかけになります。

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自分の噛み合わせが、どの種類のずれか

マウスピースで噛み合わせを扱えるかは、その噛み合わせがどういうずれなのかによって変わります。噛み合わせの「合っていない」には、方向があるためです。

上下の深さが深く、噛むと下の前歯が上の前歯に隠れてしまうタイプがあります。この深さを浅くするのは、歯を上下の方向に動かす話になり、扱われ方が別にあります。縦方向に動かすときの計画と実際の差については、深い噛み合わせを浅くする作業を追った記事があります。

上下の前後の関係がずれているタイプもあります。下の前歯が前に出ている、上の前歯が大きく突き出している、といった状態です。これらは、歯の傾きの問題か、あごの位置の問題かで道が分かれ、その見分け自体が一つの論点になります。下の歯が前に出る受け口を例にその分かれ方をたどったのが受け口が矯正で治るかは、どこ由来かで道が分かれる話です。

つまり、マウスピースで噛み合わせを扱えるかは、ひとつの答えではありません。噛み合わせのどの方向のずれか、そしてそれが歯のレベルの話か骨格のレベルの話かで、扱える範囲が変わります。自分がどれに当たるかは、鏡では見分けにくく、噛んだ状態を評価する検査を通して分かります。

ワイヤーのほうが安全、とは言い切れない

ワイヤーとマウスピースのどちらが噛み合わせに安全か、という問いは、よく出てきます。

装置ごとに、得意な動きや力のかけ方には違いがあります。ワイヤーは歯に直接つなげて力をかけるぶん、細かな傾きの調整や大きく動かす場面で使いやすいとされます。マウスピースは上下の歯の面を覆うため、その厚みが噛み合わせに関わる場面がある、というのは前に見たとおりです。装置には、それぞれこうした個性があります。

ただ、その個性は、計画のなかで使われる手段の差です。噛み合わせが仕上がりに入るかどうかとは、別の軸にあります。ワイヤーでも、並びだけを目標にした計画なら上下の当たり方は置き去りになりえますし、マウスピースでも、当たり方まで設計に入れれば噛み合わせを含めた仕上がりを目指せます。装置の個性は、その設計を実行するときの効き方に出るのであって、噛み合わせを目標に入れるかどうかを決めるものではありません。

だから、悪くなるのが不安なときに確かめるのは、装置の名前より先に、提示された計画に上下の噛み合わせをどう仕上げるかが入っているか、です。そこが、不安に直接答えます。

※本記事で触れる歯列矯正は自由診療(マウスピース型矯正装置による歯列矯正)であり、公的医療保険の対象外です。参考として当院の費用と治療期間の目安は Lite 150,000円(税込)・約2ヶ月(上下前歯12本・マウスピース各7枚以内が対象)/ Basic 330,000円(税込)・約3ヶ月(上下前歯12本が対象)/ Pro 660,000円(税込)・約6ヶ月(上下24本が対象)/ 全歯を対象とするプラン 880,000円(税込)です。全歯を対象とするプランの治療期間は、動かす範囲が広いため個々の状態により異なります。期間はいずれも歯を動かす矯正期間の目安であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。通院回数は最低1回で、治療内容・個人の状態により異なります。安心保証制度とワイヤー補償が付帯するのは Basic・Pro のみです。歯の移動に伴い、歯の痛み・歯根吸収・歯ぐきの退縮・後戻りなどのリスクが生じる場合があります。噛み合わせや骨格の状態によっては、マウスピース型矯正装置での対応が難しい場合や、先に別の治療が必要になる場合があります。重度の歯周病・顎関節症などがある方は治療をお受けいただけない場合があります。噛み合わせを含めて扱える範囲かどうかは、検査を経た診断によります。

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マウスピース矯正と噛み合わせに関するよくある質問

Q. いま噛み合わせに困っていません。前歯だけを並べても大丈夫ですか?

いま困っていないことと、動かしたあとも同じ噛み合わせが保てることは、別に確かめる必要があります。前歯を動かした結果が奥の当たり方に及べば、いまの噛み合わせが変わることもあるためです。前歯を中心にできる条件そのものは、前歯だけの治療を扱った記事の側で見分けられます。そこを計画のなかで確かめておくと、あとの不安が減ります。

Q. 治療中に噛み合わせが変わった気がします。放っておいて大丈夫ですか?

装置を入れているあいだは、上下の歯が装置を挟んで当たるため、当たり方が変わって感じることがよくあります。これ自体は治療中に起こりうるものです。ただし、外したときの当たり方が以前と明らかに違う、噛むと一部の歯にだけ強く当たる、といった状態が続くなら、経過を見てもらう材料になります。感じた変化は、次の通院のときに伝えておくとよいです。

Q. マウスピースとワイヤーで、噛み合わせの仕上がりは変わりますか?

装置の種類だけで仕上がりが決まるわけではありません。どちらの装置でも、噛み合わせを計画に含めているかどうかが仕上がりに関わります。動かせる範囲や得意な動きには装置ごとの違いがありますが、噛み合わせを整えられるかは、その違いより計画の立て方によるところが大きい部分です。

Q. 並びは気にならず、噛み合わせだけを整えたい場合もマウスピースでできますか?

噛み合わせのずれの種類によります。歯の当たり方を歯の移動で整えられる範囲であれば、対象になることがあります。骨格のずれが大きく関わる噛み合わせは、歯を動かすだけでは届きにくく、別の方法が検討されます。どちらに当たるかは、噛んだ状態を評価する検査を経て分かります。

まとめ

マウスピース矯正で噛み合わせがどうなるかは、並びとは別の軸で見ると整理できます。並びは正面から見た歯の位置、噛み合わせは上下の歯の当たり方で、この二つは同じではありません。

「悪くなった」という話の多くは、装置そのものより、並びだけを整えて上下の当たり方が計画に入っていなかったときに起きます。治療中に噛み合わせが変わって感じるのは、装置が上下の歯を覆うためで、外したあとに続くかは経過を見て分かります。

だから、悪くなるのが不安なときに確かめたいのは、上下の当たり方まで計画に入っているか、という一点です。噛み合わせを、並びのついでではなく、それ自体を目標として扱う計画になっているか。噛み合わせのどの種類のずれかによって扱える範囲も変わるので、そこは検査を通して確かめられます。

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