受け口を治そうと費用を調べると、安いものから桁が変わるほど高いものまで並び、幅がありすぎて面食らいます。自分の場合はいくらなのか見当がつかないうえ、手術になったら相当な負担かと聞くと、それなら無理かと諦めかけてしまいます。
この幅の広さには理由があります。受け口の費用は、一つの相場に定まらないのです。しかも、いちばんお金がかかりそうに見える手術の道が、そのままいちばん高いとは限りません。ここを知っておくと、幅のある数字に振り回されずに済みます。
費用に一つの相場がないのは、治療の道が分かれるから
受け口の費用が幅広く見えるのは、受け口という見た目が一つでも、それを治す道が一つではないからです。
下の歯が前に出て見える状態は、歯の傾きから来ていることもあれば、あごの土台のずれから来ていることもあります。歯の傾きが中心なら、歯を動かして整える範囲で収まることがあります。土台のずれが大きく効いていれば、歯を動かすだけでは足りず、より大がかりな治療になります。やることの量が違えば、費用もそれに従って変わります。
だから、「受け口だからいくら」という一つの数字は、自分がどの道になるかが決まる前には出てきません。相場の幅は、複数の道の費用がまとめて並べられているために生まれています。
並んでいる金額は、それぞれ別の道につく費用です。受け口を治す人が実際に進むのは、そのうちの一本だけ。だから幅の下限や上限は、そのままでは自分が払う額と結びつかず、自分の道が決まってはじめて、その一本ぶんの費用が見えてきます。自分の受け口が、その由来からどの道に分かれるのかは、受け口の矯正は、どこ由来かで道が分かれるで見ています。道が決まると、費用の枠も見えてきます。
歯を動かす道の費用は、保険が効かない自由診療
まず、歯を動かして受け口を整える道から見ていきます。マウスピースやワイヤーで歯の位置を動かしていく治療です。
この道は、原則として自由診療にあたります。見た目や噛み合わせを整えることが目的の歯列矯正は、公的な医療保険の対象外とされていて、費用は全額が自己負担になります。相場として並ぶ数字のうち、幅の下のほうは、多くがこの自由診療の道のものです。
同じ自由診療でも、金額に幅があるのは、動かす範囲や使う装置、通院のたびにかかる費用が変わるためです。この積み上がり方は、受け口に限らず矯正費用に共通する部分です。装置につく金額と通院につく金額で費用がどう動くかは、歯列矯正の費用は、装置につく金額と通院のたびにつく金額で動くの側で分解しています。ここでは、歯を動かす道が「保険の効かない自己負担の枠」にある、という位置づけを押さえておきます。
あごの骨が関わる道は、診断しだいで保険の枠に入る
次に、あごの土台のずれが大きく効いている場合です。ここが、費用の話でいちばん意外なところです。
あごの骨格そのものを手術で組み替える治療になると、体にかかる負担は、歯を動かすだけの治療より大きくなります。ところが費用の面では、逆のことが起こりえます。あごの骨格に由来する受け口で、手術と歯の矯正を組み合わせて治す必要があると診断された場合、健康保険が使える枠に入ることがあるのです。
保険が効くかどうかの分かれ目は、大がかりかどうかではなく、それが何を治すものとして扱われるかにあります。見た目や噛み合わせを整えることが目的の矯正は、公的医療保険の対象外です。一方、あごの骨格の状態が一定の診断にあてはまり、それを手術と矯正で立て直す、という枠になると、保険の側が対象として扱う場面が出てきます。同じ「受け口を治す」でも、見た目を整える扱いなのか、骨格の状態を治す扱いなのかで、費用のかかり方が変わるということです。
つまり、いちばん大がかりに見える手術の道が、保険の枠に入ることで、全額自己負担の自由診療の矯正よりも、費用が抑えられる場合があります。全額を自分で払う自由診療と違い、保険の枠に入れば自己負担は原則その一部で済むからです。治療そのものは大がかりでも、支払う額のほうは自由診療の矯正より軽くなることがある。これが、「大がかりだから高い」「軽いから安い」という順番に、そのまま並ばない理由です。
ただし、これは条件つきです。保険の枠に入るには、あごの骨格の問題として一定の診断がつくこと、そして手術と矯正を併せて行うことが前提になります。歯を動かすだけの治療には、この枠は使えません。どういう診断で、どの施設で対象になるかといった細かい条件は、制度の側で決められていて、改定されることもあります。だから「手術ならいつでも安くなる」というわけではなく、あくまで、そういう枠がある、という話にとどまります。該当しそうかどうかは、受診先で確かめることになります。
「手術=高い=無理」と決める前に、自分がどの道かを見る
費用の幅を見て混乱したり、「手術になったら高額だ」という思い込みだけで諦めたりする前に、先に見ておきたいことがあります。
それは、自分の受け口が、歯を動かす道で収まるのか、それともあごの骨が関わって手術を含む道になるのか、という点です。ここで費用の枠が変わります。歯を動かす道なら自由診療の全額自己負担、手術を含む道で保険の枠に入れば、諦めるほどの額とは限りません。
とはいえ、道選びは費用の枠だけで決まるものではありません。手術を含む道には、費用とは別に、入院や回復にかかる時間、体への負担があります。歯を動かす道は、費用こそ全額自己負担ですが、体にかかる負担はそれより小さく収まります。費用と負担はいつもセットで見るもので、安いほうへと費用だけで決めるのは向きません。ここで言いたいのは、自分がどの道になるかで費用の見え方が変わること、そして費用の枠が変わりうるという事実は、諦めるかどうかを決める前に知っておく価値がある、ということです。
そして、自分がどの道になるかは、費用の相場表を眺めても決まりません。歯の傾きだけで説明がつくのか、あごの骨格が関わるのかは、噛み合わせやあごの位置を調べる検査を経て、はじめて見当がつきます。費用を先に一つ聞くより、自分の道を先に確かめるほうが、結局は自分の場合の費用に近づきます。
※本記事で触れる歯列矯正は自由診療(マウスピース型矯正装置による歯列矯正)であり、公的医療保険の対象外です。参考として当院の費用と治療期間の目安は Lite 150,000円(税込)・約2ヶ月(上下前歯12本・マウスピース各7枚以内が対象)/ Basic 330,000円(税込)・約3ヶ月(上下前歯12本が対象)/ Pro 660,000円(税込)・約6ヶ月(上下24本が対象)/ 全歯を対象とするプラン 880,000円(税込)です。全歯を対象とするプランの治療期間は、動かす範囲が広いため個々の状態により異なります。期間はいずれも歯を動かす矯正期間の目安であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。通院回数は最低1回で、治療内容・個人の状態により異なります。安心保証制度とワイヤー補償が付帯するのは Basic・Pro のみです。歯の移動に伴い、歯の痛み・歯根吸収・歯ぐきの退縮・後戻りなどのリスクが生じる場合があります。なお当院はマウスピース型矯正装置による治療を行っており、あごの骨を動かす手術や、公的医療保険を用いた治療は提供していません。受け口が歯の移動で対応できる範囲かどうか、保険の対象になるかどうかは、検査を経た診断や、実施する医療機関での確認によります。重度の歯周病・顎関節症などがある方は治療をお受けいただけない場合があります。
受け口の矯正費用に関するよくある質問
Q. 受け口の矯正は、いくらくらいかかりますか?
一つの金額では答えにくい質問です。歯を動かす道か、あごの骨が関わる手術の道かで、費用の枠が大きく変わるためです。歯を動かす道なら自由診療の自己負担、手術を含む道で診断がつけば保険の枠に入ることもあります。同じ受け口でも入る枠が違えば費用は変わるので、一つの相場をあてはめるより、自分がどの枠になるかで費用は決まってきます。
Q. 手術になったら、高額になりますか?
手術を含む治療がすべて全額自己負担になるとは限りません。あごの骨格に由来する受け口で、手術と矯正を併せて行う必要があると診断された場合は、健康保険の対象となる枠に入ることがあります。その場合、全額自己負担のときより費用が抑えられることがあります。ただし診断や条件によるので、自分が対象になるかは受診先で確かめる必要があります。
Q. マウスピースなら安く済みますか?
マウスピースを含め、歯を動かす矯正は自由診療で、費用は全額自己負担です。手術を伴わないぶん、道としては費用の枠が読みやすい面はあります。ただし、そもそも自分の受け口がマウスピースで対応できる範囲かどうかは、費用とは別の問題です。装置で動かせるかは、傾きが中心の受け口か、あごの骨格まで関わる受け口かによって変わります。この見きわめ自体は、反対咬合はマウスピース矯正で動かせるかで扱っています。
Q. 保険は、どんなときに効きますか?
歯並びや見た目を整えるための矯正には、保険は効きません。保険の枠に入るのは、あごの骨格の状態を手術と矯正で立て直す、と診断される場合などです。その枠に入れば、費用は全額自己負担ではなく、自己負担が一部で済みます。自分が該当するかどうかは、検査を受けたうえで、受診先に確かめておくとよいでしょう。
まとめ
受け口の費用に一つの相場がないのは、治療の道が由来で分かれ、費用もそれに従うからです。歯の傾きが主で歯を動かす道は自由診療で全額自己負担、あごの骨格が関わって手術を含む道は、診断しだいで公的な医療保険の枠に入ることがあります。
だから費用の重さは、治療の大がかりさよりも、どの枠で扱われるかで決まってきます。いちばん大がかりに見える手術の道が、保険の枠に入って、自由診療の矯正より抑えられることもあります。手術と聞いて高額だと早合点して諦める前に、この枠のことを知っておくと、選択肢が狭まらずに済みます。
相場の数字より先に見たいのは、自分の受け口が保険の枠に入る道なのかどうか、です。そこに、費用の意外な逆転が隠れています。道が決まれば、費用の枠もはっきりしてきます。