勤務が不規則で平日の予定が組みにくい。職場から歯科医院まで距離がある。冬場は移動の読みが立たない。矯正を考えたときに、治療の中身より先に通院のほうが引っかかる人がいます。
来院の回数は、方式によって幅があります。その幅は、来院が何を担っているかの違いから出ています。
来院には、それぞれ役割があります。 そして役割によって、別の手段に移せるものと、移せないものがあります。減らせるのは移せるほうです。
来院が発生する場面は、いくつかに分かれる
マウスピース矯正で歯科医院に行く場面を、役割で分けてみます。
ひとつは診断のための検査です。レントゲンで骨や歯の根の状態を見る、口の中をスキャンして形を取る、実際に見て確認する。治療計画は、ここで得た情報から組み立てられます。
次に口の中で行う処置があります。歯の表面に樹脂の突起を付ける、歯と歯が接する面をわずかに削る。こうした処置は、器具を口の中に入れて行うものです。
装置が実際に合っているかの確認もあります。作ったマウスピースを入れてみて、浮きがないか、当たりが強すぎないかを見る場面です。
そして経過が計画どおりかの確認。歯が予定した位置まで動いているか、想定と違う動き方をしていないかを見ます。
回数は、おおむねこれらの役割が何回発生するかで決まります。ほかに、矯正を始める前の処置や、治療後の保定に移るところでも来院が入ります。
このうち、移せるものがある
役割を分けると、扱いが違うことが見えてきます。
経過の確認には、届けるという方法があります。口の中の写真を決められた角度で撮って送る、自宅で使えるスキャンの仕組みを使う。こうした方法で、動きの様子を届けられる部分があります。
通院の少ない方式が実際にやっているのは、この部分を移すことです。毎回来てもらって見る代わりに、送られてきたもので見る。確認という役割そのものは残っていて、届け方が変わっています。
頻度そのものが方式でどう変わるかは、前歯だけを動かす治療の通院と期間にあります。ここでは、何が移せるのかのほうを見ています。
移せないものは、来院として残る
一方で、場所を選ぶ役割があります。
診断のための検査は最初に必要です。骨の中の状態は外から見えず、写真にも写りません。ここを飛ばすと、そもそも計画が立ちません。
口の中で行う処置も、口の中でしか行えません。突起を付ける、削る。これらは自分でできるものではなく、器具と歯科医師が要ります。
装置が合っているかの実物確認にも、口の中でしかできない部分があります。画面越しでも、合っていない兆候は拾えます。ただし当たりの強さは本人の感覚に頼る部分で、実際に削って合わせる作業は口の中でしか行えません。
だから来院の回数は、減らしていってもゼロにはなりません。当院の場合、通院は最低1回※です。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
その1回は、何をする回なのか
回数として最初に必ず入るのは、診断のための来院です。
ここで撮るレントゲンは、歯の根を見るためのものです。どの向きにどれだけ植わっているか、それを支えている骨がどうなっているか。表からは見えない部分がここで分かります。口の中をスキャンして形を取るのも同じ回にまとめられることが多く、この情報がないと動かす計画が組めません。
同時に、虫歯や歯ぐきの状態も見られます。矯正を始める前に処置が必要な状態が見つかれば、順番が変わります。これも実際に口の中を見なければ分からない部分です。
つまり最初の1回は、治療の中身を決めるための回です。ここを省いて始まる形は、計画の元になる情報がないまま進みます。
必要な回数は、計画にどの役割がいくつ入るかで決まります。移せない役割を多く含む計画ほど、来院として残る部分が増えます。回数は方針の違いというより、計画の中身から出てくる数です。
回数が減ると、どこへ移るのか
役割が移れば、担い手も移ります。減った回数のぶん、自分の側に来るものがあります。
判断材料を届ける役割が、自分の側に来る
対面なら、椅子に座ってもらえばその場で見えます。届ける方式では、見えるようにするところまでが本人の作業になります。
写真の撮り方が細かく指定されるのは、このためです。角度が違えば見たいものが写らず、明るさが足りなければ判断できません。指定された頻度で送ることも同じで、間隔が空けば、そのあいだの変化は追えなくなります。
負担としては小さなものですが、送られてこなければ確認は止まります。通院の代わりに置かれている作業なので、抜けると穴がそのまま残ります。
異変に最初に気づくのが自分になる
もうひとつは、気づく役割です。
定期的に来院していれば、変化は次の回に術者の側で拾われます。間隔が空く方式では、拾われる機会がそのぶん遠くなります。気づいた時点と、それが伝わる時点の差が開きます。
この差を詰めるために置かれているのが、前の項の「指定された頻度で送る」という作業です。体制ごとの違いはマウスピース矯正を選んだあとに残る選択のほうで扱いました。
通えない時期は、計画に織り込める
勤務の形が変わる、異動がある、家庭の事情で動けなくなる。治療は数か月にわたるので、途中で条件が変わることは起こります。
北海道では季節も条件のひとつです。冬場は移動にかかる時間が読みにくく、予定していた日に動けないこともあります。市内から離れた場所に住んでいるなら、雪の時期の来院はあらかじめ見込んでおく話になります。
こうした事情は、始めてから相談するより先に伝えておくほうが扱いやすくなります。処置のために来院が要る時期を前もって知っておけば、動ける時期に寄せられることがあります。逆に、来院が必要な時期を知らないまま予定を組むと、後からの調整が難しくなります。
来院がいつ発生するかは、役割によって時期が違います。診断のための来院は最初に固まります。処置のための来院は、計画のなかで動かす順番が決まっているので、入る時期もそこで決まります。経過の確認は、そのあいだに分散します。
つまり、動けない時期がいつかによって重さが変わります。経過の確認が重なる時期なら、届ける方式に寄せて調整できる幅があります。処置が入る時期なら、そこは動かしにくい。どの時期がどれにあたるかは、計画が出た段階で分かります。
通えない可能性そのものが治療を諦める理由になるとは限りません。ただし、それを見込んでいない計画は、途中で止まりやすくなります。
※本記事で触れる歯列矯正は自由診療(マウスピース型矯正装置による歯列矯正)であり、公的医療保険の対象外です。参考として当院の費用と治療期間の目安は Lite 150,000円(税込)・約2ヶ月(上下前歯12本・マウスピース各7枚以内が対象)/ Basic 330,000円(税込)・約3ヶ月(上下前歯12本が対象)/ Pro 660,000円(税込)・約6ヶ月(上下24本が対象)/ 全歯を対象とするプラン 880,000円(税込)です。全歯を対象とするプランの治療期間は、動かす範囲が広いため個々の状態により異なります。期間はいずれも歯を動かす矯正期間の目安であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。通院回数は最低1回で、治療内容・個人の状態により異なります。安心保証制度とワイヤー補償が付帯するのは Basic・Pro のみです。歯の移動に伴い、歯の痛み・歯根吸収・歯ぐきの退縮・後戻りなどのリスクが生じる場合があります。歯の側面を削る処置を行った場合、削った部分は元に戻らず、一時的にしみることがあります。重度の歯周病や顎関節症などがある方は治療をお受けいただけない場合があります。
診断を経ないものは、範囲が違う
ここまでは、役割の一部を別の手段に移した治療の話です。これとは範囲の違うものもあります。
歯科医師の診断を受けないまま始められる、届いたマウスピースを自己判断で交換していく。こうした形は、通院回数を減らした矯正治療とは別のものにあたります。
歯を動かすことは歯科医師でなければ行えない医療行為で、診察を経ずに治療を行うことは法律で禁じられています。役割を移す方式でも、判断しているのは歯科医師です。届け方が変わっただけで、判断する人がいなくなるわけではありません。
なお矯正では、SNSでの宣伝と引き換えに費用が実質無料になるという勧誘について、消費生活センターが注意を促しています。契約の形が通常の診療と違う場合があるため、支払いの条件と途中でやめるときの扱いは、始める前に確認しておく対象になります。
マウスピース矯正の通院に関するよくある質問
Q. 引っ越しや転勤で通えなくなったらどうなりますか?
途中で通えなくなったときにどうなるかは、契約の取り決めしだいです。転院できるのか、費用はどうなるのか、装置の作り直しが必要かどうか。始める前に聞いておけば、異動が決まったときに慌てずに済みます。
Q. 写真を送るだけで、対面と同じように見てもらえますか?
経過の写真から読み取れるのは、歯の位置の変化と装置の浮きです。条件を揃えて撮れば、この2つは届きます。歯ぐきの状態も、写真からある程度は見られます。ただし腫れの奥行きや当たりの強さの感覚までは、写真に置き換わりません。届ける方式では、こうした部分をどの頻度で対面で見るかが計画に組み込まれています。
Q. 通院が少ない方式は、治療の質が落ちますか?
成立の条件は2つあります。移した役割が別の形で果たされていること、移せない役割が来院として残っていること。この2つが揃っていれば、回数が少ない計画でも進みます。
Q. 忙しくて指定された時期に行けない場合はどうなりますか?
処置のための来院は、治療の進み方に組み込まれているので、遅れるとその先の予定に影響します。マウスピースの交換だけ先に進めてよいかは状態によって変わるため、自己判断で進めずに連絡してください。事前に相談すれば、順番を入れ替えられる場合もあります。
Q. オンラインの相談だけで治療を始められますか?
相談の段階でできることと、診断はまた別です。治療計画を立てるにはレントゲンやスキャンの情報が要るため、始めるまでのどこかで来院が入ります。相談で聞けることは多いので、通えるタイミングを決める前に話をしておくと、予定が立てやすくなります。
まとめ
マウスピース矯正の来院は、役割ごとに発生しています。そのうち場所を選ぶものと、選ばないものがあります。
このうち経過の確認は、写真やスキャンで届けられる部分があります。通院の少ない方式がやっているのは、ここを移すことです。確認という役割は残っていて、届け方が変わっています。
残りは場所を選びます。骨の中の状態は外から見えず、口の中で行う処置は口の中でしかできません。だから回数は減らせても、ゼロにはなりません。
自分の場合に何回要るかは、計画にどの役割がどれだけ入るかで決まります。それが分かるのは、検査を受けたあとです。