歯並びを整えたい。透明な装置なら目立たない。ここまでは早く決まります。決まらないのはこの先です。
「マウスピース矯正にする」と決めても、そこで話は終わりません。同じ呼び名で括られているものの中身は、思うほど揃っていないからです。 対象になる歯の範囲も、通院の体制も、治療計画をどこまで見せてもらえるかも、選ぶ先によって変わります。何が共通していて何が違うのかを分けておくと、次に何を決めるのかがはっきりします。
共通しているのはここまで
マウスピース矯正では、少しずつ形の違う透明な装置を順番に交換していきます。装置は取り外せて、食事と歯みがきのときは外し、それ以外の時間は装着しておくのが基本です。1日20時間以上を前提とする計画が一般的ですが、前提となる時間は装置によって変わります。
共通しているのは、おおむねここまでです。 装置が得意な動きと苦手な動きはマウスピース矯正の失敗はなぜ起きる?原因の3つの所在と、開始前に打てる手側に書いたので、ここでは繰り返しません。この記事で見ていくのは、そこから先の揃っていない部分です。
「マウスピース矯正にする」で決まっていないこと
同じ呼び名でも、次の点は選ぶ先によって変わります。しかもどれも表示されている情報からは読み取りにくい部分です。
対象になる歯の範囲
前歯を中心とした範囲を想定した設計と、奥歯を含めて動かす設計があります。この違いは料金にも期間にも直結します。
自分がどちらを必要とするかは見た目では決まらず、噛み合わせを含めた検査の結果で決まります。範囲が決まる条件については奥歯の噛み合わせが分かれ目になる理由を見てください。検討の最初に確定させたいのはここです。
診療の体制
通院の頻度、担当する歯科医師が固定されるかどうか、経過の確認をどこまで対面で行うか。この部分は提供する側の方針によって大きく変わります。
来院の回数が少ない進め方もあれば、こまめに確認する進め方もあります(通院回数は治療内容・個人の状態により異なります)。どちらが良いという話ではなく、それぞれが何に効くのかを知っておくと選びやすくなります。
担当が固定されるかどうかは、計画を変える判断をするときに効きます。 経過を見てきた人が判断するのと、その回に初めて見る人が判断するのとでは、判断の材料が違います。順調に進んでいる間は差が出にくく、想定とずれたときに差が出る部分です。
対面で確認する頻度は、口の中を見ないと分からない変化に気づく機会の多さに効きます。 装置がわずかに浮いている、特定の歯だけ当たりが強い、歯ぐきが腫れている。こうした変化は自分では判断がつきにくいものです。
もう一つ確かめたいのが、予定どおりに進まなかったときに誰がどう判断するかです。装置が合わなくなった、痛みが続いている、計画より動きが遅い。こうしたときに次の来院まで待つのか、その場で連絡できる窓口があるのか。案内ページに書かれていないことが多いので、相談の場で聞く項目になります。
治療計画をどこまで見せてもらえるか
見落とされやすいのがここです。治療計画をいつ、どこまで見せてもらえるかは、揃っていません。
確かめたいのは3点あります。ひとつは、契約の前に見られるのか、契約後に示されるのか。ふたつめは、動かす歯の本数や必要な装置の枚数といった数字が示されるのか、仕上がりのイメージだけなのか。3つめは、その内容を持ち帰れるのか、その場で見るだけなのか。
これが効いてくるのは、複数の医院を比べようとしたときです。数字が示されなければ条件を揃えて比べられませんし、持ち帰れなければ後から見返せません。金額だけを並べても比較にならないのは、この情報がないと同じ治療を比べているのかが分からないためです。
治療が始まってからも効きます。計画を手元に持っていれば、いま何枚目で、当初どこまで動く予定だったのかを自分で照らせます。予定と実際がずれてきたときに気づけるかどうかは、この情報を持っているかで変わります。
途中でやめるときの条件
始める前には考えにくいことですが、ここも揃っていません。
治療を中断する場合の扱いは、契約の内容によって変わります。装置をまだ作っていない段階なのか、すでに全部作られているのかで返金の考え方が変わることがありますし、いつまでに申し出るかで扱いが変わる場合もあります。転勤や進学で通えなくなる可能性がある方は、始める前に確認しておく項目です。
契約書のどこに書かれているかを、契約の場で指してもらってください。 口頭の説明だけで済ませると、後から確かめる先がなくなります。
表示された金額に何が含まれるか
料金についても、表示されている額がそのまま最終的に払う額とは限りません。検査費や保定装置の費用が別になっている場合があります。
だから聞くべきは「この金額は誰が決めたものですか」ではなく、「この金額に何が含まれますか」です。含まれる範囲を揃えないうちは、金額の差は比較になりません。何が含まれ何が別になるのかはマウスピース矯正の値段はいくら?幅が生まれる理由と総額の見方で項目別に並べています。
※歯列矯正は自由診療であり、公的医療保険の対象外です。当院で提供しているマウスピース型矯正装置による歯列矯正の費用は Lite 150,000円(税込)/ Basic 330,000円(税込)/ Pro 660,000円(税込)/ 全歯を対象とするプラン 880,000円(税込)です。安心保証制度とワイヤー補償が付帯するのは Basic・Pro のみです。治療期間の目安は Lite 約2ヶ月/ Basic 約3ヶ月/ Pro 約6ヶ月で、いずれも歯を動かす矯正期間を指し、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。通院回数は最低1回で、治療内容・個人の状態により異なります。歯の移動に伴い、歯の痛み・歯根吸収・歯ぐきの退縮・後戻りなどのリスクが生じる場合があります。重度の歯周病や顎関節症などがある方は治療をお受けいただけない場合があります。
検討するときの順番
揃っていないものが分かると、どこから決めればいいかも見えてきます。順番を逆にすると、あとで前提が変わって組み直すことになります。
まず、どこまで動かす必要があるか
最初に確かめるのは、自分の歯並びがどこまでの移動を必要とするかです。ここが定まらないと、範囲も期間も費用も動きません。
判断には検査が要ります。レントゲンで歯の根と骨の位置を見て、歯型や噛み合わせの状態を確かめる必要があるためです。範囲が定まると、それ以降の情報の見え方が変わります。同じ「マウスピース矯正」の説明でも、自分に該当する話とそうでない話を区別できるようになるからです。調べる量を増やすより、この一点を先に確定させるほうが早く進みます。
検査の前から分かることもある
一方で、検査を待たなくても確かめられる条件があります。通いやすさと、装着時間を確保できるかの2つです。
通院先の場所と診療時間が自分の生活と合うかは、いま調べられます。1日20時間以上の装着が現実的かも、食事の回数や人前で外す場面を実際の1日に当てはめれば見当がつきます。
ただしこの2つで医院を絞り込まないでください。 範囲が決まったあとに選び直しになるためです。候補を外す材料ではなく、候補を並べておく材料として持っておく。この扱いにしておくと、検査のあとの判断が速くなります。
最後に、体制と費用
範囲が定まって初めて、体制と費用を比べる意味が出ます。同じ範囲・同じ条件で並べれば、差が何に対する差なのかが見えてきます。
順番としては最後ですが、優先度が低いという意味ではありません。比べられる状態になるのがこの段階だ、ということです。
マウスピースを使う歯科矯正に関するよくある質問
Q. どのマウスピース矯正でも同じように動きますか?
装置が歯を動かすという基本は共通ですが、対応を想定している範囲が違います。前歯を中心に設計されたものと、奥歯を含めて動かす設計のものでは、狙っている移動の量が異なります。検査を受けて必要な移動が分かれば、どちらの話なのかが決まります。
Q. 調べるほど情報が食い違って見えるのはなぜですか?
前提が書かれていないまま結論だけが並んでいるためです。前歯を中心とした範囲を想定した説明と、奥歯を含む範囲を想定した説明では、期間も費用も対応できる歯並びも変わります。読むときに「どの範囲の話をしているのか」を先に見ると、食い違いの多くは説明がつきます。
Q. 検査を受けたら、その医院で始めなければいけませんか?
検査と契約は別です。ただし前述のとおり、計画を持ち帰れるかどうかは医院によって違います。比べるつもりがあるなら、検査を受ける前にその点を確認しておくと迷いません。
Q. 「マウスピースでは難しい」と言われたら、どうすればいいですか?
理由を聞いてください。先に別の治療が必要という意味なのか、動かす場所が足りないという意味なのか、噛み合わせの問題なのかで、次にやることが変わります。この見分け方は「難しい」と言われた理由の分け方にまとめました。
まとめ
マウスピースを使う歯科矯正で共通しているのは、装置を交換して動かすことと、取り外せることくらいです。対象になる歯の範囲も、通院の体制も、治療計画をどこまで見せてもらえるかも、途中でやめるときの条件も、選ぶ先によって変わります。
そしてこれらは、どれも表示された情報からは読み取れません。だから比較サイトを何時間眺めても、この部分は埋まらないままです。埋まるのは、実際に相談して聞いたときだけです。
だから検討の順番は、動かす範囲を確定させる → 検査前から分かる条件で候補を並べておく → 体制と費用を比べるになります。範囲が定まらないうちに金額を比べても、前提が変われば組み直しです。
「マウスピース矯正にする」は、選択の終わりではなく始まりです。 ただ、次に決めるのが範囲だと分かっていれば、迷う対象はもう1つに絞られています。