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八重歯の矯正|あの歯は、両隣が埋まったあとに生えてくる

写真を撮られるとき、口を閉じて笑う癖がついている。人には「八重歯かわいいね」と言われるけれど、自分ではずっと気になっている。気になっているのは歯並び全体ではなく、外に出ている歯のほうです。

あの歯があの位置にあるのには、順番の理由があります。上あごの犬歯は、その両隣の歯より遅れて生えてきます。 自分が入るはずの場所の左右が先に埋まるので、残った幅が足りなければ外へ出るしかありません。

順番が分かると、治療の話がなぜ大きくなりがちなのかも見えてきます。

目次

両隣より遅いことは、数字で出ている

八重歯になっているのは上あごの犬歯です。糸切り歯とも呼ばれる、前から3番目の歯にあたります。

この歯には少し変わったところがあります。歯の頭の部分は6〜7歳ごろにはもう出来上がっているのに、実際に口の中へ出てくるのは10〜12歳ごろ。出番までの待ち時間が長い歯です。

日本小児歯科学会が全国3万人規模で調べた永久歯の萌出時期の調査に、平均の萌出年齢が出ています。上あごの犬歯は男子で11歳0か月。両隣を見ると、内側の側切歯が8歳4か月、外側の第一小臼歯が10歳4か月です。どちらも犬歯より先に来ています。 女子は全体に数字が下がりますが、順序は変わりません。

つまり犬歯が到着する時点で、自分の入る場所は左右から挟まれています。残っている幅が足りていれば、そのまま列に収まります。足りていなければ、収まる場所がないので外側へ出るしかありません。この状態を臨床では低位唇側転位と呼びます。八重歯と呼ばれているのは、この状態のことです。

待っているあいだ、犬歯は骨の中にいます。歯ぐきの上に姿を見せていないだけで、出口へ向かう移動は進んでいます。その道のりは永久歯のなかでも長く、途中で向きも変わります。そして到着したときにそこがどうなっているかは、犬歯の側では選べません。

歯が暴れたわけでも、生え方を間違えたわけでもありません。行ける場所がそこしかなかった、というだけです。空いていた場所に出た、と言い換えてもいい。

だから見えているのは、犬歯より前に起きたこと

犬歯が来たときに幅が足りていなかったのなら、足りなくなったのはそれより前ということになります。

あごの幅に対して歯が大きめだった場合、並べたときの合計の幅が収まりきりません。あごの幅そのものが小さめだった場合も同じことが起きます。どちらも犬歯が生えてくるずっと前から決まっていた条件です。

もうひとつ、途中で起きる場合もあります。乳歯が虫歯やけがで本来より早く抜けてしまうと、空いた隙間へ周りの歯が寄ってきます。本来そこは、後から来る歯のために空けておく場所でした。 寄られた分だけ、後続の歯の幅が減ります。

このことは歯科の側でも問題として扱われています。乳歯が早く抜けた子どもには、その場所を保つための装置が使われることがあります。保隙装置と呼ばれるものです。

つまり八重歯を見ているとき、実際に見えているのは犬歯そのものの問題ではありません。犬歯が来る前に、場所がどう埋まっていったかの記録です。決着はもっと前についていて、犬歯はその結果を引き受けた側にあります。

自分の癖のせいだろうか、と考える人もいますが、そういう話ではありません。順番と場所の問題です。

同じ不足でも、現れ方は一つではない

幅が足りないという状態は、いつも八重歯という形をとるわけではありません。歯が重なって前後にずれる、軸がねじれた向きで生える、一部の歯だけ内側に引っ込む。並びきらない分をどこで吸収するかによって、見え方が変わります。

八重歯はそのうちの一つの現れ方です。遅れて来た歯が、列の外という空きを使ったという形をとった、ということになります。

だから鏡で見て気になる場所と、足りていない量が生じた場所は、必ずしも一致しません。飛び出している歯の真下に不足があるとは限らず、列全体で見たときの合計として足りていない。不足が合計として生じる以上、扱う対象も列の側になります。

治療も、同じ順番で動く

ここまで来ると、治療の形も見当がつきます。

外へ出ている歯を内側へ押す。素朴に考えればそうなりますが、押した先に場所がなければ収まりません。歯の並びは詰まった状態なので、無理に押し込めば隣の歯が押し返されるか、別のどこかがずれます。動かした先の分だけ、どこかが玉突きになる。

八重歯が外に出ているのは、その位置なら他の歯とぶつからずに済んだからでもあります。列の外は空いていた、というだけの話です。

だから治療は逆から動きます。先に場所を作って、そこへ入れる。 順番としてはこちらです。八重歯の治療が「飛び出した歯を戻す」ではなく「並べ直す」と説明されるのは、このためです。

場所をどう作るかにはいくつかの方法があり、どれを使うかは検査で決まります。歯の幅をわずかに削る、奥の歯を後ろへ動かす、抜いて場所を空ける。この選び分けには口元を下げるときに場所をどこから捻出するかで触れました。本記事で扱うのは、場所を作るのが先だという順番のほうです。

治療の順番は、歯が列に入ったあとにもう一段あります。外へ出ていた歯が列に収まれば、見た目の印象は変わります。ただし上下の当たり方が落ち着くまでには、そこから別の時間がかかります。並んだ直後は、それまでとは違う場所で噛むことになるためです。見た目の変化が先に来て、噛み合わせの安定が後から来ます。

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犬歯は、歯列の曲がり角にある

治療の範囲が広くなりやすいことには、もうひとつ理由があります。犬歯が歯列のどこに立っているか、という位置の話です。

歯の並びを上から見ると、前歯のあたりは丸く弧を描き、奥へ行くほど直線に近づきます。その弧が直線へ切り替わる角に立っているのが犬歯です。 前歯のグループと奥歯のグループの境目、と言い換えてもいい場所にあたります。

角にある歯の場所を動かそうとすると、影響は前後の両方向へ出ます。前歯側の並びにも、奥歯側の並びにも接しているためです。

犬歯が矯正で抜く歯として選ばれにくいのも、同じ位置の話です。角にあたる歯を抜くと、弧の形そのものが変わってしまいます。

場所を作る作業の起点は、角の両側にあります。

どこまでの範囲で収まるかは歯並びによって変わります。前歯まわりに絞った治療で足りることもあれば、奥歯を含めた範囲が必要になることもあります。その線引きは前歯を中心に動かす治療の適応と限界が詳しいです。

どれだけの場所を作れるかは、歯の幅、骨の状態、奥歯の位置によって変わります。ここが実際の数字として出てくるのは、精密検査のあとです。逆に言えば、それまでは範囲も期間も見積もりの域を出ません。相談の場で規模の話が確定しないのは、この順番によるものです。

※本記事で触れる歯列矯正は自由診療(マウスピース型矯正装置による歯列矯正)であり、公的医療保険の対象外です。参考として当院の費用と治療期間の目安は Lite 150,000円(税込)・約2ヶ月(上下前歯12本・マウスピース各7枚以内が対象)/ Basic 330,000円(税込)・約3ヶ月(上下前歯12本が対象)/ Pro 660,000円(税込)・約6ヶ月(上下24本が対象)/ 全歯を対象とするプラン 880,000円(税込)です。全歯を対象とするプランの治療期間は、動かす範囲が広いため個々の状態により異なります。期間はいずれも歯を動かす矯正期間の目安であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。通院回数は最低1回で、治療内容・個人の状態により異なります。安心保証制度とワイヤー補償が付帯するのは Basic・Pro のみです。歯の移動に伴い、歯の痛み・歯根吸収・歯ぐきの退縮・後戻りなどのリスクが生じる場合があります。歯の側面を削る処置を行った場合、削った部分は元に戻らず、一時的にしみることがあります。重度の歯周病や顎関節症などがある方は治療をお受けいただけない場合があります。

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八重歯の矯正に関するよくある質問

Q. 八重歯そのものを抜いてしまえば早いのではないですか?

その歯を抜けば場所は空きますが、矯正で抜く歯として犬歯が選ばれることは通常ありません。歯の根が長く太いことに加えて、歯列の角にあたるため抜くと弧の形が変わってしまうことが理由です。場所を作る目的で抜歯をする場合は、犬歯の後ろにある別の歯が選ばれるのが一般的です。

Q. 八重歯のままだと、噛み合わせに影響はありますか?

犬歯は、あごを横へ動かしたときに上下が当たって、奥歯を浮かせる役割を担っています。犬歯誘導と呼ばれるはたらきで、奥の歯にかかる負担を減らすことにつながります。位置が外れている場合にこの役割がどこまで働いているかは、状態によります。ただ列に収まったほうが、力のかかり方は整いやすくなります。

Q. 片方だけ八重歯です。左右で違うのはなぜですか?

場所の減り方は左右で別々に進みます。乳歯がいつ抜けたか、隣の歯がどれだけ寄ってきたかは、右と左で同じとは限りません。片側だけ幅が足りなくなれば、その側の犬歯だけが外へ出ます。左右差があること自体は珍しくなく、それだけで治療の難しさが決まるわけでもありません。

Q. 大人になってからでも、八重歯は動きますか?

歯を動かす仕組み自体に年齢の上限はありません。成長期なら顎の育ちを見込んだ方法も選べますが、それが終わっていても歯は動きます。ただし歯ぐきや骨の状態には個人差があるので、動かせる範囲は検査で決まります。

Q. 八重歯がかわいいと言われます。治す必要はありますか?

噛み合わせや歯みがきのしやすさに影響が出ていないかは、見た目の好みとは切り離して診る対象です。影響がなければ、外見をどう扱うかは別の判断になります。

Q. 子どもの八重歯は、放っておくと自然に治りますか?

不足の程度によっては、生えかわりのなかで収まることもあります。乳歯と後から生えてくる歯には幅の差があり、その差が並ぶ余地として使われるためです。ただし足りない量が大きい場合、自然に解消することはあまり期待できません。生えかわりの時期に一度みてもらうと、様子を見るかどうかも含めて判断できます。

まとめ

八重歯は、犬歯が悪さをした結果ではありません。上あごの犬歯は歯の頭が6〜7歳で出来上がっているのに、口の中へ出てくるのは10〜12歳ごろ。両隣が埋まったあとに到着する歯です。

そのときに残っている幅が足りなければ、外へ出るしかありません。だから八重歯を見ているとき、実際に見えているのは犬歯より前に何が起きたかのほうです。

治療も同じ順番で動きます。飛び出した歯を押し込むのではなく、先に場所を作ってそこへ入れる。範囲が広くなりやすいのは、犬歯が歯列の角に立っていて、場所を作る作業が前後に広がるからです。

犬歯が到着したとき、両隣はもう埋まっていました。治療はその前提を作り直すところから始まります。気になっている歯そのものが動くのは、場所が用意されたあとです。

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