治療を始めて数か月たったころ、「追加のマウスピースを作ります」と言われることがあります。理由は説明されても、期間が延びると聞いた時点で気持ちが止まる。この生活があとどれだけ続くのか、そこが見えなくなります。
インビザラインの治療には、途中で計画を作り直す工程が用意されています。追加アライナー、あるいはリファインメントという名前で呼ばれます。
工程が入れば、期間はその分延びます。
計画は、途中で作り直されることがある
インビザラインでは、治療を始める前に歯の動きを3Dで組み立てます。クリンチェックと呼ばれる工程で、どの歯をどの順番でどこまで動かすかが、開始前に一通り決まります。
ただし歯は、計画どおりに動くとは限りません。予定した位置まで来ていない歯がある、想定と違う向きに動いている。こうしたずれが出たとき、その時点の歯並びをもう一度スキャンして、そこから計画を組み直します。
このとき行われるのは、最初に治療計画を立てたときと同じ精密検査です。そしてクリンチェックも、もう一度行われます。いまの位置から、あらためて到達点までの計画が引き直され、そのうえで新しいアライナーが作られます。
開始前に一度通った工程が、治療の途中でもう一度入ります。
この工程が入ること自体は、珍しくありません。動き方には人によって差が出るので、最初の計画が最後までそのまま通るとは限りません。
もちろん、入らずに終わる治療もあります。動かす量が小さく、計画どおりに進んだ場合です。動かす距離が長いほど途中で差が出やすくなるので、動かす量の多い計画ほど工程が入る可能性は上がります。自分がどちらになるかは、始める前には決まりません。 計画を受け取る段階で分かるのは、動かす量と範囲までです。
引き直された計画は、いまの歯並びから組み直される
つまり途中で見ていた「あと何枚で終わり」という数え方は、そこでいったんリセットされます。残り枚数を数えて終わりを待っていた人にとっては、この点がいちばん堪えるところかもしれません。
新しい計画では、動きにくかった歯をどう扱うかがあらためて検討されます。
そして組み直された計画には、あらためて枚数が付きます。数える手がかりがなくなるのは、新しい計画を受け取るまでのあいだです。受け取った時点で、そこから何枚で、どれくらいの期間かが示されます。
先に「始める前には決まらない」と書いたのは、開始前の読者に向けた話です。すでに告げられている人は、次の計画が出てきた時点で、その数を持てます。いま見えていないのは、これから先ずっとではなく、組み直しが終わるまでの区間です。
同じ「追加します」でも、指しているものが違う
追加が入る経緯は、ひととおりではありません。
装着や交換のタイミングは、そのうちのひとつです。取り外せる装置は、外している時間のあいだ力を伝えません。積み重なれば、計画のほうを現状に合わせ直す必要が出ます。装着時間そのものの扱いは動きが止まったときに何が起きているかに譲ります。
一方で、歯を長い距離動かす計画では、はじめから複数回に分ける前提で組まれることもあります。動かす距離が長いほど、予定どおりに動かないことが起きやすいためです。この場合、追加アライナーは想定外の出来事ではなく、最初から工程の一部として見込まれています。
同じ「追加します」という言葉でも、指している中身は同じとは限りません。計画に追いつくための作り直しなのか、もともと段階に分けていたうちの次の段階なのか。どちらなのかは、そのとき何が起きていたかで分かれます。
工程が入ると、何が延びるのか
期間が延びる
作り直しには時間がかかります。もう一度スキャンを取り、計画を作り、装置ができてくるまで待つ。この間も治療は続いているので、全体の期間はその分後ろへずれます。
何回入るか、どれだけ延びるかは、動かす量とずれの大きさによって変わります。始める前に確定できる種類の数字ではありません。
分かるのは、治療が進んでからになる
作り直しが要るかどうかは、実際に動かしてみないと判断できません。だから告げられるのは、多くの場合、治療がある程度進んだあとです。
これは順序の問題として、避けにくいところがあります。ずれが出ているかどうかは、動かした結果を見なければ分かりません。分かった時点では、すでに何か月か使っています。投じた時間の上に、追加の時間が乗ります。
待っているあいだも、装置は使い続ける
新しいアライナーができるまでには、スキャン、計画の作成、製作と配送の時間がかかります。そのあいだも治療は続いています。
多くの場合、最後まで使ったアライナーをそのまま入れ続けます。外したままにすると戻る方向へ動き、新しいアライナーが合わなくなることがあります。この待ち時間は、治療が止まっている時間ではありません。いまの位置を保っている時間です。医院から別の指示が出ることもあります。
このあいだも装着の条件は変わりません。むしろ「新しいものが来るまでの待機」という気持ちが加わるぶん、続けるのがしんどく感じられる時期でもあります。
ここは実際に落ちやすいところです。手元にあるのは最後まで使い終えた装置で、次の枚数に進む区切りもありません。それでも装着が落ちると、新しい計画の出発点そのものがずれます。 組み直したばかりの計画に、また差が出ることになります。
合わなくなってきた感じがある、装置が浮く、外している時間が延びている。こうしたことが起きているなら、新しい装置が届くのを待たずに医院に伝えてください。届いてから分かるより、その前に分かるほうが手が打てます。
生活の制約は、期間に比例する
延びるのは、終わりの日付だけではありません。
1日の大半を装着して過ごすこと。食事のたびに外して、また入れること。外出先で磨く場所を探すこと。人前で外すタイミングを計ること。これらは治療が続いているあいだ、ずっと同じ強さで続きます。慣れる部分はあっても、消えはしません。
期間が延びれば、この条件もそのまま延びます。 半分まで来たと思っていたところから、また距離が増える。終わりが見えていたから耐えられていた部分がある場合、そこが崩れます。
「やらなきゃよかった」という言い方が、この延長のあいだに積み上がった負担を指している場合があります。歯は計画どおりに並んでいても、そこに至るまでの生活のほうが想像と違っていた場合です。
枚数の上限があるプランでは、費用にも関わる
作り直しは、費用の側にも接します。
インビザラインという製品自体にいくつかのパッケージがあります。そのうちのいくつかは、使えるマウスピースの枚数に上限があります。
この上限は、契約した時点では効いていません。作り直しが起きて、はじめて条件として現れます。 上限のあるプランで枚数を超えれば、そこから費用が発生することがあります。枚数に上限のないプランでも、追加の回数によって費用が発生する場合があります。プランの仕様と、医院ごとの取り決めは別のものです。
つまり見積もりを見た段階では、上限があること自体は分かっても、それが自分に効くかどうかまでは決まっていません。上限を超えた分が総額のどこに乗るかは、マウスピースの枚数と総額の関係を見てください。
※以下は当院が提供する矯正装置の料金であり、インビザラインの費用ではありません。以下のプラン名は、インビザラインのパッケージ名とは別のものです。歯列矯正は自由診療(マウスピース型矯正装置による歯列矯正)であり、公的医療保険の対象外です。当院の費用と治療期間の目安は Lite 150,000円(税込)・約2ヶ月(上下前歯12本・マウスピース各7枚以内が対象)/ Basic 330,000円(税込)・約3ヶ月(上下前歯12本が対象)/ Pro 660,000円(税込)・約6ヶ月(上下24本が対象)/ 全歯を対象とするプラン 880,000円(税込)です。全歯を対象とするプランの治療期間は、動かす範囲が広いため個々の状態により異なります。期間はいずれも歯を動かす矯正期間の目安であり、後戻りを防ぐ保定期間は含みません。通院回数は最低1回で、治療内容・個人の状態により異なります。安心保証制度とワイヤー補償が付帯するのは Basic・Pro のみです。歯の移動に伴い、歯の痛み・歯根吸収・歯ぐきの退縮・後戻りなどのリスクが生じる場合があります。歯の側面を削る処置を行った場合、削った部分は元に戻らず、一時的にしみることがあります。重度の歯周病や顎関節症などがある方は治療をお受けいただけない場合があります。
インビザラインの追加アライナーに関するよくある質問
Q. 追加アライナーが必要と言われました。治療が失敗したのでしょうか?
作り直しは、計画と実際の動きを合わせ直すための工程です。動き方に差が出ること自体は、治療の途中で普通に起こります。
Q. 何回まで作り直せますか?
回数の扱いは、プランと契約で変わります。何度でも作れる前提なのか、区切りがあるのか。すでに始めている場合は、契約書に記載があるかを見るのが早い確認方法になります。
Q. 新しいマウスピースができるまで、どのくらい待ちますか?
スキャンを取り直してから、計画を作り、装置ができて届くまでの時間がかかります。長さは医院と時期によって変わります。この期間も装置は使い続けます。
Q. もうやめたいと思ったとき、途中でやめられますか?
装置の使用を止めること自体はできます。ただし動かしている途中の歯は、その位置で落ち着いてはいません。止めたあとどうなるか、保定に切り替えられる段階なのかは状態によります。自己判断で外したままにせず、相談してください。しんどいと感じていること自体を伝えて構いません。進め方を調整できる場合があります。
まとめ
インビザラインの治療計画は、一度作って終わりにはなっていません。歯の動きと計画にずれが出れば、その時点で計画を組み直し、新しいアライナーを作ります。
工程が入れば期間は延びます。1日の大半の装着も、食事のたびの着脱も、外で磨く場所を探すことも、同じだけ長く続きます。
いま感じている負担が想像していたものと違うなら、それは結果とは別に、伝えていい情報です。